「企画発案の方法論」という切り口で開催した秀玄舎メンバーによる意見交換会レポート後編。企画発案においては発想の方法を学ぶことが先か、あるいは事例の収集が先か?ほか、各メンバーが情報収集で参考にしているメディア、チャネルなどについて語った。
取り上げられている事例の特徴を理解しないことには情報過多になるだけ
お客さんに対して「私たちを頼らないで、自分たちでITの企画を立てられるようになってください」って教えるしたら、選択肢が2つ思いつくんです。1つは前編のIDEOみたいな発想方法を学びましょうって話と、もう1つは同業でも他社でもいいんだけど事例をひたすら勉強してください、かつての日経情報ストラテジーのような雑誌を読んでくださいって話。皆さんやるとしたらどちらですか?
後者だと思います。
私は両方じゃないとダメかな。たとえば、Amazonは使いやすいって言うけど、本質的に何が使いやすいのかって視点を持つ前に、例えばUIの使いやすいサイトを200社集めてキャプチャーを撮って並べても、事例のどこに共通項や応用できる部分が分からなくてあんまり勉強にならないし、次の新しい発想にならないと思うんです。型なり発想法なり抽象化みたいなことを覚えてから、事例を集めることは意味があると思うんですけど。
僕もいきなり事例集めは結構ハードル高いイメージです。最初にその考え方とか実際にやってみるメソトロジー的な議論をやってから事例を集めて、再度そのワークショップをやるサンドイッチのイメージ。
その事例がなぜ取り上げられてるのか本質的なことが分からないと事例だけあっても情報過多だよね。
事例をもとに今の問題や未来を考えるやり方だったらいいかもしれません。
だからこそ、一旦業務フローを書いてみて現状を分析するんでしょうね。それがアンカリングされて、相対的なものとして「こういう事例を集めていきましょう」とか「これとそこの違いは何でしょう」とか「その違いから発想を入れましょう」とかに発展していくんじゃないでしょうか。
方法論ってデザイン思考でも話題になった「事故をいかに起こすか」って話だと思ってます。自分の中に自分で事故を起こすというか、何かを作り出す方法論ってあんまりないような気がするんですけど。そこはどう思います?
ロジカルシンキングだと、フレームワークで事故が起きることになっているじゃない?それじゃダメなんですか?
学術的には生み出す側のプロセスなりメソトロジーがあるのかもしれないけど、自分は何かを思いつくときに、どう思い出してるか分からないんです。少なくとも今ここにいる人達は事例ベース以外のことで、思いつく方法がない気がするけど、どうなんだろう?
入社した時に防災アプリを担当したじゃないですか。あのアプリって、僕の案を入れてるんですよ。例えば体育館とかに避難した時に、糖尿病のインシュリンだとか常備薬を持ってない人がいますよね。その人たちにタブレットを渡して、ポチポチ入力すると、体育館にその薬を要求出来る機能が付いていたような気がするんですよね。
それって自分でシミュレーションをしている中で思いついたんですよね?
それが私、そんな経験したことがないので、何で思いついたんだろう?と考えると、全然関係ないポスターを見たときにハッと思いついたんです。
そういう意味だとアナロジーの話じゃないですかね。ちょっと離れたところで関心事として自分の中に持っていると発想を得られるっていうことではないかな?
我々は、日頃から事例のシャワーを浴びているけど、そうではない非ITの人たちが、自分たちの業務をこうやって改善できるんじゃないかっていうアイディアを、どこから生み出せるようになってもらうかですよね。論点は過去に経験もインプットも全く無い状態で何かを生み出す話ではなくて、そこにどういうプロセスでたどり着くかなのかなと。
AI、Twitter 、YouTube…情報収集には何が最適?
今クライアントとやっているの講座の方針は、アナロジーでもユニバーサルでもいいんだけど、何かしらを勉強した後、事例をどう捉えるかの訓練をするのね。その事例はよそとどのように違っているのかに注目して、エッセンスを取り出してみる。それを自社に当てはめるとどうなんだろう?みたいなプロセスを教えると、定着するかはさておき、再現性が得られるよね。
これまではITの用語とか基礎知識として情報に触れたら、それが何で取り上げられたのかとか、どういう歴史でこの用語が出てきたのかを学びましょうっていうことをやったの。だから事例そのものに意味がある訳じゃなくて、その事例は何が違うのかに意味があるんだという結論です。ところで皆さんはどこで事例の情報を入手していますか?
Twitterですね。
私はGoogle、Amazon、Apple…諸々の AIのスクリーニングにひたすら頼っていて、まとめメディアとか、それこそはてなブックマークとか人力のものからは、新しい情報を拾わなくなりました。
俺はそれに頼ってたら自分のGoogleニュースが全部ゴシップになっちゃって全部OFFにしました。みんながどういうメディアと接してるのかとかは意外と興味深い。
それも全部AIに捜して来てもらって、全部を見に行きます。
それって偏った時に困りそうですけど。
偏った時にはリセットしてますよ。これは興味ないとか、これは入ってきてほしくないというカスタマイズや意思表現をしますし、少なくとも仕事に使えるメディアやチャネルを数個は維持しようと努力してますね。ブラウザとかGoogleアカウントとかで分けてます。
自分の中の多重人格をブラウザで。アカウントを間違えちゃったりしないの?
間違ったら、必死で「悪いね」評価をつけるとか興味ないっていうのを何度か連打して戻すみたいな。あとは結構もう皆さんだよりです。
結局、情報を摂取する時間は限られているわけだからメディアで勝負は決まるよね。
YouTubeも面白いですよ。
さんとか、すごく紹介してくれるんだけど、僕、動画全然ダメなんです。
基本的に動画って時間を占有するじゃん?
2倍速で見るんですよ。
私は聴きながら他の仕事をしてるので占有はしてないですよ。多分、興味がある時しか耳が傾かないから。ただの多動なだけなんですけど。
すごい、僕は無理だな。多分、動画がダメなタイプなんだと思います。人によってメディアの感受性が違いますよね。
私も最初は動画でこんな情報とても見ていられないって思ってましたけどね。通勤時間がなくなって情報に触れる時間が減ったので、それを補うために聞いてますよ。
膨大な量の情報から、自分に必要なもの、関心のあるものをどう選別する?
ほとんどの人は知らないでしょうけど、会社ができて3年目ぐらいの勉強会でさんが速読術について勉強してたんですよ。さんが読む前にどういう情報を仕入れたいかみたいなキーワードをピックアップしてからバーっと目を通すんですよね。そうすると要点が入ってくると。当時の社長と、僕も乗っかったと思いますけど「それじゃ読みたいものしか読めないから新しい発見がないじゃん」って言うと、25歳ぐらいのさんがすごい必死に抵抗してたのを覚えてます。今のさんの自分の知りたい情報だけ聞こえるようになっているって、どういう構造なんだろうね。
そういうものじゃないですか?焼肉屋を見つけたいって町に出たら、焼肉屋の看板がすぐ目につくし。
アンテナ理論だね。その場所を見て、焼肉屋がここ、そこ、あそこにあるって認知の領域が立証されていることだけど、さんがやってることは「自分に役立ちそうなこと」っていうくくりなんですよ。
自分が興味がない動画が再生開始されても、ほぼ聴かないというスタンスで聴き続けるんですが、「こんなのあるんだ」ってチャンネル登録が増えることはあります。聴きたい情報だけ聴いているけど、新しい情報を得ることが1つのカテゴリーになっているから、あえて聴きたくないものを見聴きするようにしています。TikTokのおすすめってすごくて、絶対自分が興味なさそうなものをランダムに混ぜてくるんだけど、それがきっかけで興味を持ってYouTubeで関連するチャンネル探して登録してまた見るようになることはあります。
僕もキーワードで一時的にはスクリーニングしている気がするんですよ。自分の頭の中で、これが関心事だってものがハイライトされている状態で情報を取得する、片や、自分が知らない言葉もハイライトされてる気がします。
全く知らないものを知る為の情報源としては、最近TikTokはすごいかもしれません。1つの情報を大体2秒とかで処理できるので。そこから調べてYouTubeチャンネル登録してちゃんと見るみたいなのは結構多いですね。
今日はこのへんでおしまいですかね。ありがとうございました。
提案やアイディアに繋がる・繋げる情報収集。共通項もありつつ人それぞれでもありますね。もし皆さんがこの議論に参加されたら、どんな見解をもらえるのか。考えるとわくわくします。