【Value総会議】これからの情シスはどうあるべき?秀玄舎メンバー意見交換会レポート(前編)

定期開催している秀玄舎メンバーによる意見交換会

今回のテーマは「情シスとは今後どうあるべきか?」。DXが加速する今、情報システム部の立ち位置や役割、期待されるスキルや人材に変化は生じているのか?各々が経験した事例をもとに忌憚のない議論を行った。





 

 

業界、業態の境目が曖昧になっている今、ITは部署ではなくファンクションとして語るべき

 

今日のテーマは「情シスとはどうあるべきか」です。「情シスとは何か」というそもそもの前提も会社によっても違いますから、前提を置かない議論をどこまでできるか分かりませんが、この話題が出て来た背景からお話いただけますか?

 

昔、ある会社の電算室と呼ばれている部署で、社内の取引を記憶し続けて会計帳票の元ネタを作る業務に関わっていたんですよ。そこから徐々にEUCが進んでいくと、間接部門としてというよりは社員たちとの繋がりを意識して仕事するようになったんです。更にインターネットが普及すると、企業間取引とは、ECとはみたいな話になり、情報システム部門が関与し始めて、そこからDXが起こり、会社全体のビジネスをデジタルに移行していくんですね。

ただ、電算室って過去の取引を正しく記録することがミッションなので、ものすごく数値に正確な保守的な人が選ばれる傾向があったかと思うのですが、実際、EUCをやっていくと経営陣に対して何らかの存在感を示すとか、攻めの姿勢みたいなものを現場からも期待されるようになっていくんです。DXって「よその会社より遅れているから進んでやっていこう」とか言われて始まるものでもあるから、情報システム部の位置づけがどんどん上にも横にも広がっていくんですよ。情報システムじゃないとしても、その機能は必要だろうし、これから先どうあるべきだろうという話を一つのモデルに限定するのではなく、色んな選択肢がありますよという観点から話したいなと。

 

目的次第な部分はあるけどその目的についていけないとか、方向性が違うとか、ギャップが色々出ているから情シスの評判がなかなか上がらないことが課題ということですかね?

 

オーソドックスで伝統的な情報システムでよくあるのは非常に保守的で、サッカーでいうディフェンダーみたいな感じ。ミスすると怒られる。でも現場でちょっとだけITかじった人が「こんなの簡単にできるでしょ」って情シスに持ち込んで「いや、意外と大変ですよ」って言われることがよくあるんですよ。

2000年頃からCIOみたい存在が必要だと世の中的には言われてきましたし、情シス部長だった人がCIOになることが多かったけど、僕は経営に対して支援をする立場として、データ部門から連れてきたほうがいいと言ってきているんです。そうこうしているうちに、CTOとかCDOも出てきて、CIOは「保守的な人で十分だよ」とか言われる始末なのはおかしな流れだなって。

 

これまでは脇にあったITが今や主役となり、それがないと業務自体が回せないとか競争を勝ち抜けない状況があらゆる業種・業態で起こっていて、いつまで情シスに押し込めておくのかという話もありますよね。業界がすごく曖昧になり、越境してきている今、情シスでどこまでやるかという議論は結構悩ましいですね。

 

そう、部署というファンクションとして語られたほうがいいですね。

 

情シスに主体性が求められる今後、社内で議論が起こる環境が重要になる

 

日本で本当のIT開発を自社内でできるところってまだ少なくて、外部に発注することが多いので、その時に情シスを通っていくのか、事業部から発注が行くのかによっても、情シス社員が持つべきファンクションは変わってきますよね。

 

海外の企業で社内に情シスがあるところってあるんですか?

 

海外は外部発注がそもそもないですし、私が付き合いあるところは大体IT企業ですけど、ないに近い気がしますね。

海外ではないけど、あるメーカーでは一つの組織ではなくセキュリティ委員会みたいになっていたのを記憶しています。各事業部の中の詳しい人が集まって、社内共通ルールを作って相互に補完しましょうと、中央集権的な情シスはなくていいというスタンスだったんですよ。それはおそらく全員が一定のITスキルを持っていることが前提だと思いますけど。

 

そもそも情シスに“色々できる人材”っていないじゃないですか。事業会社にいるのは、その事業に憧れて入ってきた人ばかりで、その事業のシステムをやりたくて入社する人はいないと思うんです。

 

どうだろう、それは採用の仕方なんじゃない?この会社はこんな技術をやっているとか、このシステムを知りたいからこの会社で働きたいっていう敏感な人は、結構知り合いにもいるから、捉え方次第だと思うけど。

 

システムでサービスを売っているところはそうかもしれないけど、サービス中心のところでもそうなりますかね?

 

主業務や事業部がITをやらないっていう前提で採用をかけると、そういう見た目になるんじゃないでしょうか。でも今後はITも事業の一つになるのだからそれが採用項目に入ってくるのかなと。

 

ある保険会社が全部のチームをアジャイル化した話を聞くと、情シスというかITのハブになるのは楽しそうだなと。要は一つの商品にすごくどっぷりハマりたいわけじゃないけど、色んなサービスをどうやってDXしていくかとか、複数絡めるポジションとしての情シス社員って主体性が必要だし、楽しそうだと思いますね。それが情シスなのか、もしくは事業部側にそういう人材がいた方がいいのかという議論は個人的にはどちらでもよくて、議論が起きている様が大事だと思っています。

ビジネスよりの人とかテクノロジーよりの人とか、デザインよりの人もいるのかな、ユーザー目線での社内の議論風景の中で、情シスってどういう社員がいて、どういう役割であるべきだろうって会話をして、事業部ごとに多様性みたいなものがすでに担保できているのなら、情シスは守りに徹してもいいし、そうでなければ、事業部のカウンターパートとしての情シスを作るとか。事業サイドの人たちと、同じ目線かつITに詳しい人を取ることが採用戦略として難しいけど必要だし、そういう人材を育てないと情シスの未来って暗いだろうなという気もします。

 

 

情報システム部

<中編へ続く>