「情シスとは今後どうあるべきか?」をテーマに議論した秀玄舎メンバーによる意見交換会中編。これまで情シスが陥りがちだった「丸投げ」や「押し付け」状態を回避する策はあるか?イノベーションを起こすためにまず取り組むべきことは?議論は想像を超えた展開に進展した。
ワークショップやカンファレンス…ITのイメージが湧かない経営層に有効なアプローチはあるか
情シス含めてITの部分をどうデザインするか経営者レベルで考えられているかどうかってことですね。しかし「うちの情シスは駄目だ」って言っている人に限って全然イメージできていない可能性もありますね。
むしろどういう情シスであれば社内がすごく有機的に話できるのか、イメージ湧いていますか?って聞き返したら、多分まともなイメージを持っていないでしょうね。
「それはITの専門家が考えるべきだ」みたいな話になってしまって、それってビジネスの将来の構造を放棄しちゃっていますよね。
ただ、鶏が先か卵が先かの話になっちゃうけど、ある程度経験して苦労してみないとITのことは分からないじゃんっていう話でもあるよね。とりあえず今のリソースでやるだけやってみて、何が足りないか考えなさいというのも酷かもしれない。
今あるリソースで無理なら、外部の人を連れてきて、それこそ三ヶ月のワークショップでもやって体感してみたら、ちょっとイメージ湧くようになるんじゃないですかね。経営者向けにワークショップとか、カンファレンスはちょっとやってみたいな。エンジニアやデザイナーには交流会や勉強会があるけど経営者は、なかなか勉強しに行くとこがなさそうだし。
そういう勉強会があっても、経営者は行かずに情シスのトップが行かされているような気がしますけどね…。経営層がITのことを考えてないパターンだと全部情シスに押し付けようとする風潮があるので、本人が変わらなきゃ意味がないですよね。今の話を聞いていると、攻めと守りを分けようとしているから、却って分断しているような気もするんですよ。
情シスは元々ディフェンダーなので、ミスをしないことにばかり注力していて現場から嫌われるということがあるんだけど、無責任に「それって本当に悪いことなの?必要なコンフリクトじゃないの?」って考える人もいるんですよね。
そういう無責任なことを言う人をなだめてくれるキャラクターが情シスにいると強いですね。
僕が22歳で入った広告代理店の部長は物凄くそれが上手かったんですよ。当時、基幹システムのリニューアルをやっていて、現場の事業部長とかマネージャーに対して、これから何が起こるってことを毎日行脚して根回ししていたんです。はたから見ると1日中お茶しているだけなんだけど、僕の原体験として、情シスの部長ってこういう仕事だなって今でも思います。
そもそもうまく噛み合っている会社は困ってないから、秀玄舎に相談に来ないんじゃないでしょうか(笑)逆説的だけど、僕らが知っているのはうまく噛み合っていない話しかないんじゃないかな。
情シス部長に必要なのは営業力?or課せられるミッション次第で異なる?
僕は結局情シスが何をするところかも分かっていないんですよね。PCをセッティングするイメージもあるし、基幹システムを守っているイメージもあるし。福井さんがさっき言っていたお茶している部長さんの部隊の人たちはシステムを守らなきゃいけない立場なのに、いつも部長不在だったら「あの人何やっているの?」って部長さんのことよく思わないかもしれないですよね。金融系のシステムみたいにガチガチに守らなきゃいけないところもあれば、事業部門に「もうちょっと柔軟に動いてほしい」って言われる話もあるから、結局役回りによって全然違うというか、そのポジションにおける責任をどう全うするかによるんじゃないかなとは思います。
外食大手のグループで、グループ共通の情シス会社があるんですよね。グループの業態ごとに社長がいて、その社長は共通の情シスのシステムを使うも、自分たちで自社開発するのも、ある程度自由に裁量権任されているらしいです。そのシステムがグループの利益や個別の最適化にいかに寄与するかを実際にシステムを使ってもらう事業部の人をプレゼンしに行って、ある意味、社内での営業努力みたいなのが問われるんですよ。難しいけれど悪い姿ではないかもしれないなと感じていました。
今どきの情報システム部の部長に必要なものって営業力みたいなところもありますよね。経営陣に対してアピールできないCEOなんて飛ばされちゃう。
その情シス部長に課せられているものが何かによると思うんですよね。それこそDXを推進せよという話なのに、ずっと守りの体勢でいたら、何やっているの?って話ですけど、基幹システムを守ることが一つのミッションなら、それはもうがっつりやるんじゃないの?って。だからミッション次第かなって気もするけど。
そのミッションもあまりにたくさんあると多分キャパオーバーになるし、どこを向いていいのか迷うだろうから、その辺は経営層とうまく意思疎通が取れたらよくなりそうな気はしますね。必要であれば、はっきりと部署を立ちあげてDXを推進するとか。
そういうファンクションが会社に必要だったとして、それが情シスである必要があるかどうかはよくわからない。
誰か考える人が必要なんだけど、情シス部長が言われるままに押し付けられちゃいがちなところはありますよね。
イノベーションそのものを情シスに押し付けているなら、その体質に問題がありますよね。
ITに詳しいからITイノベーションを起こすわけではないよね。僕は色んな現場で、両方に詳しい人を何とかして育ててくださいってずっと言い続けてきたけど、それがそもそも難しい。
両方に詳しい人がいたら議論しやすいというのは確かだと思います。最近私が向き合っているのは詳しくないことまで含めて議論できる人とか、議論をファシリテートしようとする人、要は自分の得意領域以外の話も一定レベルかもしれないけど、理解して何らかの結論を導こうとする人がまず必要。全分野に詳しい人を見つけてくるよりまだ可能性があるなって。でもそれだけで社内で飯食っていけるようなポジションがあんまりない気もしますね。
僕も結構そっちの方がありな感じがしていて、CIOとかが事業も両方分かっている最強な人になっていくべきとは思わないんです。CIOを据えたとして、その人から本質を理解して、判断したり、権限委譲したりできるCEO的な立場がいないと結局ダメなんじゃないかなって。CIOっていう立場を「何か分からないものをやっといてもらう」押し付け係にするのか、それとも自分のキャパシティを拡張する存在として据えるのかで違いが大きいですよね。
CTOやCIOに求められているのはIT化を達成した先の未来を描く力
CIO、CDOというレイヤーじゃなくてもある程度確信を持ってビジョンを拡張するような人材を入れることも大事だし、今まで自分の判断の範疇だと起きない不確実性を生むような別分野、たとえばデザイナーとかDXの経験者を情シスに呼ぶことも大事かも。「うちの会社には合わないかもしれないけど、合わなかったときのコンフリクトとか含めて会社の成長だよね」みたいに思える存在というか。
新しい情シスを作るにしても、KPIを設定して、毎月毎年うまくいったかどうか計測しがちだけど、そんな数値に顕れるような成果とか、なかなか出ない難しい話と向き合っているんじゃないかなという気がしたりする。
とはいえ、情シスはどうあるべきかと相談してくる人たちがそんなに無責任に丸投げしようとしている気はしないんですよ。何らかの啓蒙みたいなものを期待はしていて、役員勢に対してITとはこういうものなんですと言ってきてほしいと。もちろん自分が勉強しに行けよって話ですけど、そんなにみんな丸投げしたいとは思っていないです。
CTOなりCIOは、この会社がIT化を達成したら、例えばこうなりますよとか、その先にある未来を描く力みたいなのが求められるし、そういう情シストップを雇わないと難しいんじゃないでしょうか。ITについて一般的な説明をしても、その役員たちに気づきを与えづらい気がするので、CIOは役員たちに伝えるというか、それを吸収してCIOの言葉にする必要がある気がします。
いつまで経っても事業戦略に基づいたITの話が出来ない方が知り合いにいて
「これを改善するためにはシステム開発に2000万円かかります」とか言っているわけ。
会社がこっちの方向に行くから、こういうITにしなきゃいけないんだとあなたが語らなきゃいけないですよって僕は言っているんだけど、今の話聞いているとそれをCEOが語らなきゃいけないのは、なかなかしんどいなあっていう気がしちゃう。
その人が自分で何かをデザインするとか、形づくるのが嫌なんじゃないですか?課題整理までしたら誰かに決めて欲しい人のように聞こえます。
実際、情シス上がりの人たちって基本的に自分でリクエストを作らないですし、全体的に正解のないところに答えを設定することができないんですよ。それより「情シスがどうあるべきか」という今回の題の立て方が悪かったことは大変申し訳ない。
そこに辿り着いた(笑)
<後編へ続く>