「DXと内製化」という切り口で開催した秀玄舎メンバーによる意見交換会レポート後編。
試行錯誤をやめると、トランスフォーメーションは終了してしまう
前編で、DX推進をベンダーに丸投げしてしまうとダメという話をしていましたよね。ベンダー丸投げで失われるものについて考えますか。
たとえば、紙で出版された本を電子書籍にするかどうかみたいな話って、本業が出版の人にはその需要やビジネス的な価値が理解しきれないからコンサルなどに外注せざるを得ないのかなって思ってて。でも個人的には、お金がふんだんにあって、スピード感をもってやれるのなら外注でもいいかなと思っちゃうんです。その代わり、自分たちでその後の運用をしっかり、まかなうことができればよくて。そう考えると、どこまでが内製でどこからが外注だったんだろうなってなりますね。
いいアイディアをどんどん出してくれるのであれば、コンサルも積極的に使うべきだろうし、自社のビジネスに取り入れるべきかなど先のことも考えて、事業企画ができる人がいてこそ内製なんじゃないかな。
デジタルのこともその後の運用のこともわかるハイブリッドな人が中にいるべきだけど、近頃は外から来た人の方がハイブリッドとしてのクオリティーが、高い可能性があるね。これまでの話を聞きながら、思っていたのは、本業がデジタル化することの隠れた文脈は継続性なんだよね。今やろうとしていることが必ずしもゴールではなくて、試行錯誤し続けるということです。本業は常に変わり続けていて、変わり続ける人材、変わり続けることが本業の本質だとすると、試行錯誤し続ける人がやることがDXなんだと。という意味だと、やっぱり社員じゃなきゃダメなのかなって。
その試行錯誤する人が内製もしくは社内にいれば活動は継続するだろうけど、その部分を外に投げちゃった瞬間、どんなに優秀であろうとお金を止めたら試行錯誤、活動としてのトランスフォーメーションは止まっちゃうんですよ。DXっていう言葉そのものは流行らなくなるかもしれない。だけど活動自体は今後数十年止まらない、止めていい話じゃないので、試行錯誤できる人を中におきましょうってことですかね。試行錯誤できる人を中におきましょうねっていう文脈だったら内製化は正しいという言い方もできるかもしれない。必ずしも現時点ではハイブリッド人材が中にいないといけないというわけではない。
非IT業界だったらデジタル化の選択肢とか品質を求める場合、意識の高い外の人を発掘するしかない。
クライアントもDXのビジョンを持つべき? or SIerの業務スコープ?
言い方は悪いんですけど、試行錯誤してくれない人の下につくと、たくさん選択肢を出しても機能しないという体感があります。詳しくなくても、自分なりに考えて、こうした方がいいとか意見をくれる人であればプロジェクトが前に進む気がしますね。
ざっくりでもいいのでビジョンを持っていてほしいというのはないですか?まだ個人的に経験したことはないんですけど、「DXやりたいです」っていうただ漠然とカッコいいことやりたいですっていうのは困るかも…。だから別にハイブリッドじゃなくてもいいですし、具体的なプランなくてもいいけど、この例えば事業をこうしていきたいっていう長期的でも中長期でも短期的でもプランがある方が助かるんですけど。
言いたいことはわかるけど、現場の人間として、そのビジョンが描けない人を否定しちゃっていいのかっていうのはちょっと悩ましいね。
とはいえ、あまりにもまっさらだと洗脳されちゃうんじゃないでしょうか。
世の中がデジタル化してるから何かしなきゃいけないと思っている、そして外の言うことに、振り回されてしまう人たちを切り捨てていいのかっていうのは、ちょっと難しい問題。デジタル化したあと、どんな世の中になるかについては、ものすごくレベルの差があるから、その人にビジョンを持たせるところまでは、実は我々のスコープだったりする。
私も同意見で、ビジョンを作っていくところから一緒にやらないと、能力的にもしんどいのかなと思います。たとえば新規事業室みたいな部署に異動してきただけの人にいきなり着任してビジョンを持てと言っても厳しいでしょうから、一緒にビジョンを作っていくことは、我々の業務スコープな気がします。もちろん、個人的意見でもいいから持っててほしいのが理想だけど、試行錯誤する気さえあれば、まだ私の中では一緒にやれるラインかなだと思います。
「何かいいアイディアないですか」とか言われるけどそれはそれで別に悪くない。でも、やはり丸投げはされたくはないですよ。だけど、どこまでビジョンを持っていて欲しいかって言われると、根本的なところを持っていないことについては許容しなきゃいけない気がしている。
これは本当に感覚値ですけど、その一瞬だけの行為を見たらほぼ一緒なのかもしれない。「いいアイディアください」と頼まれて、アイディアを返すとします。丸投げの人ってその後の反応が「もう分かりました。じゃあその通り作ります」ですよね。それだけじゃない人は自分なりに理解しようとするし、考え方も少しずつできてくる。
コンサル長年やっていて、コンサルがパフォーマンスするもしないも、ユーザのコミットメント次第だなって思うんですけど、あいつ丸投げだなってどこで思ってんだろうなという疑問。
問題認識かな…。少なくともこういうことが会社で問題だから何とかして欲しいというところまでのメッセージは最低限欲しいですね。それもないのに、「とりあえず何とかしてみたいな」という状態だと「何が問題なんですか?」と聞き直すことになりますね。
他人事感か。
トラブルとかならもう事象があるから分かりやすいけど、コンサル的な入り方をしたときに結構あることですよね。意志なのか意思なのかって話だけど、とりあえず何が問題なのかはちゃんと整理してほしいなと思います。
意思や当事者意識がある人が組織内にいれば、外注で足りないビジョンもスキルも補完しながらDXができるって言ってしまっていいのかな。
将来に向けて自分の中で考えて、提案に対してちゃんとフィードバックを返せる人、じゃないかな。
となるとDXは関係なくなってきた。
DXって別に目新しい話じゃなくて。ずっと会社がやっていかなきゃいけないことが、たまたまデジタルかどうかじゃないですか。どこに変わろうとしたって内製化しなきゃダメだ。今日はみんなの意見が一致しちゃったね。
DXにおける日米の温度差について
確かにあんまり反論がない。しかし日本では何でDXがこんな流行ってるのにアメリカでは流行ってないのか。
うん、流行ってないね。
誰かが以前言ってたのは、日本だとそれぞれ古い企業がDX化していても間に合うと。ただアメリカだと、そもそもIT系の巨人、Amazonとかね。に、その業界が目をつけられたら、根こそぎ潰されちゃうので、その業界から逃げた方がいいらしいです。ご存知かもしれないですけども、家を建てる3DプリンターみたいなものをAmazonが開発して、鉄筋コンクリートの家が1/5程度の値段で立つみたいな世界だから既存企業のDXとか意味ないんですって。悲しい気持ちになりましたね。
その記事見たことあるかもしれないな。Amazonに目を付けられたら逃げるしかないよね。
たとえばコンビニがAmazon型になっちゃったら、もう既存の従業員を抱えたコンビニタイプの店は絶対勝てないって分かりますもん。
日本のエンジニアは8割が社外にいるけど、アメリカは6割が社内にいるんですよね。でも残りの4割も別にSIerにはいなくてプロダクトを作っているんですよ。何で日本がそんな構造なのかはよく分かってないけど、内製化するかどうかみたいな議論になるのも結局そこなのかも。
それ、よく議論になりますよね。ユーザ側にいないから日本はダメなんだ的な。
でも実際日本だとハイブリッドの人が育たない土壌になるので、秀玄舎が入っていくのもそういうところですよね。日本と欧米って理系の比率が違ったりするのかな。
そもそも欧米に理系って概念があるんですかね。
内製化の本質の話が最終的にはしたかったのに行きつかなかったね。何の話してたんだっけ。「DXは内製化でなければならない」か?
お客さんがDXやらないといけないと思っているけれど、「IT部隊がいないから内製した方が良いのかな?」みたいに言ってきた時には、自分たちで握ろうとするかどうかがまず大事という話ですね。あとは、コストとスピードとかのバランスの中で決まって行くんじゃないんですか?ってことですね。内製だから出来る出来ないとかじゃなくて、まずはやりたいと思ってますか。問題意識を持っていますかっていう話ですかね。
普通はこういう結論にならないような気がしますが、秀玄舎らしい結論と思います。本日はありがとうございました。