#VALUE総会議 DX推進には内製化が必須?(前編)

あらゆる業界でDX(デジタルトランスフォーメーション)の必要性、重要性が叫ばれだして久しい。

今回、意見交換会の発端となったのは、下記記事である。

「DXは内製化:この前提なくしてSI事業者のDX戦略は成立しない」

URL: https://www.netcommerce.co.jp/blog/2020/03/15/15188

今後のビジネスの成否を左右するのは、内製化なのか?秀玄舎メンバーによるディスカッションの様子を前後編に渡ってお送りします。

 

「内製化」の定義は? 内製化と外部委託のそれぞれのメリットを考える

 

2020年3月と少し古い記事なんですけど、「DX推進におけるスピード感やコスト感、素早さ、俊敏さといった文脈では、基本的にはDXは内製化が前提である」と。であればDXを外注しようと考えているとしたらユーザはきっとDXの本質を理解できていないんじゃないか?ということが書かれているんです。しかし、記事の最後では「内製化では全部まかなえない」とも言われているので、どっちやねんって感じがあるんですけども。

内製化って1つのキーワードになっていて、私はこれまで「DXと内製化」みたいな切り口で考えたことがなかったなと気づいたんですよ。「内製化じゃないと結局できること、できないことってなんだっけ?」って実際言われたと仮定して今一度整理してみようかなと。皆さんも若干DXについては聞き飽きているかもしれないけど、DXの仕事は実際結構あるので、秀玄舎としてどのように内製化を続けるのかという意見交換をしたいなと。

内製化じゃないとできないこと、あるいは内製化なんてそもそも必要ないっていう意見もあるかもしれないので、思うところがあったらちょっと教えて欲しいです。

 

最初からちゃぶ台をひっくり返すようですが、そもそも「内製化」とは何でしょう。

 

いいですね、そこからいきましょうか。

 

内製化の定義って何でしょうね。たとえば、要件定義と設計は社内でやります、業務委託のフリーランスプログラマーが20人いるとします。これは内製化ですか?

あるいは20人のうち10人分は機能がはっきりしているので、10人分は請負で外に出します。これも内製化ですか?また、内製化の反対語は何でしょう。外注?

 

ちょっと違うような気がしますね。

 

外注は、契約形態だもんね。

 

調べてみると内製化の反対は外部委託とのことです。アウトソーシングとか外部委託とか。

 

だとすると、内製化と外部委託、それぞれが会社にどのような影響を与えるか違いが分からないことには、どちらにすべきかの議論ができない気がする。

 

非常に単純ですがコストが削減できるというのがあると思います。要するに、自社の社員の給与が安いということになってしまいますけど、少なくとも日本国内では、外注するより安く抑えられるケースが多いのではないでしょうか。

加えて、スピードも速くなると思います。関わる人数が減りますので、内製化を担当する技術者を鶴の一言で変えられるというのもあるんじゃないでしょうか。

 

そこは多分ケースバイケースかな。内製だから早くなる、安くなるとは言い切れないかもしれない。

DXの本質は本業がデジタル化していくこと

 

構造的な観点では成果物以外のもの、経験値とかノウハウといったものが残ると思います。それが、大きければ大きいほど遅くも高くもなるかもしれないけれど、作る過程で得られる全てのものを残したいと思えば内製化になるんじゃないでしょうか。

 

つまりはその長期的なリソースに対する拘束力が違うと。逆を言うと、それしか違わないのかな?

 

極論ですけど、業務委託だとしてもそれを30年間やったらそれはもはや社員じゃないですか。60歳になるまで、こんなお仕事をやってくださいって話だから。

 

銀行などは、外注の方が詳しくなるというケースがありますよね。経緯を知っている方がいるのは、大きな財産だし、それによってすごいスピードが変わっていくでしょう。

 

うーん、でも「DXは内製化でなければならない」と言っている人の発言の意図は多分そういうことじゃないと思うけど。

リモートワークのシステムを導入しました、これがDXですって意見もあって、これまでの自分たちのビジネスの本業がデジタル化することがDXの本質だと主張している人からすると、開発の作り手が外にあるか内にあるかという話ではないと思うんだ。つまり、要件定義のような業務を本業部門の人もちゃんとやるということじゃないだろうか。

 

業務部門と、内製化部隊の話ですか?

 

例えば、これまでは営業してた人がシステムを作ったりするとか、RPAとかノーコードという範囲でだけどね。ここ1,2年で話題にのぼるようになったDXが、従来のシステム化と違う文脈を持つとすると、開発者が中にいるか外にいるかという話じゃなくて、本業がデジタル化していくことだと思っています。アジャイルに物事を進めていかなければならないので、社内にエンジニアがいて、本業とITの両方のハイブリッドの人材が育たないみたいなことを言いたい気持ちはわからなくもないけど。

 

うん、なんかいいこと言ってる気がするけど。今の文脈でどうとらえるか。

 

技術の陳腐化は内製化が陥りやすい問題

 

今回の話は社内に開発者を持っているかどうかという視点ではなくて、丸投げかそうじゃないかみたいな話に近いかな。

DXをやりたいけど、全部ベンダーが言う通りにやっているようではだめで、さっき言ってくれたように、大事なところやノウハウをまとめるところも外注に出しているけれど、自分たちでまとめるところはまとめるという体制やそれが出来る人が社内にあれば、ノウハウも蓄積していけるでしょうね。

 

コストとかスピードといったものは内製だから外注だからという議論にあんまり関係なくて、自分たちがどこまで、意志を持ってグリップするかみたいなところが、切り口ですかね。

 

ゼロイチというはっきりしたものというよりはグラデーションになっているんだと思う。常に20人開発リソースが必要で、外に出すか中にいるかは、あまり本質的な議論ではない。ただ、よくそのIT界隈のベンチャーキャピタルなどではそのトライアンドエラーをしようと思うと社内に開発部隊がいた方がいいよねと言われている。でもそれは、やりようじゃないのかなと思っているけど。

 

逆に、その内製部隊を全く持っていない会社があるとします。そこが、DX的にITのイノベーションを起こそうとした場合、内製化するために組織を変えるまでしなくても、外注でDX達成できるはずでしょっていう。

 

契約の仕方とかね。ファブレスはありえると思います。あくまでも外注としてだけど、全く非IT分野のビジネスしか分からないベンチャー主に対して、システムの企画まで入り込むようなIT企業って最近結構あるんだよね。一方で、すごく伝統的な内製の問題として技術の陳腐化というのがあります。要はITが本業じゃないから、社内でのSEのスキルを維持することができない。昔から言われていることで、なぜ日本のエンジニアは外に出るのかというと、ずっとそこで修行ができるからなんだよね。

 

ITのノウハウのない伝統的な企業でDXは起こせるのか

 

外注として開発リソースが必要なんだけど、その価値を理解し、発注できるかどうかは大きそうな気がしますけどね。

 

言いたいことはわかるんだけど、それはどちらかというと、その会社側が面白いビジネスかどうかを選んでいるかどうかにかかっている気がしますね。

 

その企業が面白いことやっていれば、そういう会社がどんどん入り込んでくるっていうビジネスの面白さ。若手のすごく優秀なエンジニアが集まって、ITに詳しくないベンチャー主に対して企画力やもろもろを補ってアジャイルを回しているチームを複数見ているんだけど外注だけどとても柔軟に対応しているし、ちゃんと選んで仕事をしているんだ。

自分の作ったものが形になって結果が出るってことをやりたくて、事業側に移っている人が多いんだよなってここ数年は思いますね。そこまでできる人は「内製に近いことができる外注」なので、結局「内製化とは何か」にまた戻る気がしますけどね。

 

 

「DXは内製でなければならない」と言っている記事の文脈は詳しくは分からないですけど、多分、本業とあわせて要件定義や設計ができる人材が社内にいるべきであるって言いたいんじゃないかな。外注がヒアリングして、クライアントに対して忖度して要件定義を決めているうちはDXとは呼べないでしょと言いたいのだとしたら、最近は外注でも社員のようなスタンスで業務を遂行してくれる人が出てきているよ。

 

それはIT側も事業側もベンチャーですか?たとえば創設100年規模の企業がDXに意欲的でかつノウハウは何もない状態に、アプローチして入り込んでくれるっていうのって難しそうなんですけど。

 

僕が見た限りは開発の提供側は必ずしもベンチャーじゃなかったですよ。

 

というのは歴史のある企業に対して既存社員のように入り込むのってなかなか難しいだろうなと思ったので。古い企業ならではのルールなどを承知した上で、それらをすべて変えていくって考えると、その企業文化とか歴史とか特徴を理解するだけで時間かかりそうだなと思っていたので。

 

どこまでシンクロしなきゃいけないのかは気になりますね。

 

DXが結局デジタルへの再解釈みたいな話レベルであれば、外部であっても協力的な外部の人たちが設計とか要件定義を担えると思うんですけど、ビジネスを見直すとか連続的にイノベーションを起こし続けたいっていうのであれば、DXのゴールはやはり会社の中に持ちたいんじゃないかなと個人的には思っています。まだ言葉だと割り切れていなくて難しいですね。

(後編に続く)

 

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