マネジメントの裾野を広げるには何をすべきか?秀玄舎メンバー意見交換会レポート(後編)

定期開催している秀玄舎メンバーによる意見交換会。今回のテーマは「マネジメントの裾野を広げるためにはどうするべきか?」。後編ではマネジメントにまつわる海外の事例や、具体的な改善案について議論を交わした。

マネジメントスキル

 

クライアント自身が問題そのものを認識しないことには、改善のしようがない

 

サッカーを例にすると、どんな素人でも分かるような基本的なルールがあるじゃないですか、手を使ったらダメとかゴールにボールを入れるとか。敵のゴールに向かって、みんながボールを蹴り込むみたいな運用でも、とりあえずゲームは成り立つし、運が良ければ勝てますよね。勝てるならサッカーチームにも監督は要らないだろうって言われることと、今話しているマネジメントの必要性の話は近いのかなって思います。ちゃんとマネジメントが必要なサッカーチームにするために、個々の選手がちゃんと連携取れている必要があるのだとしたら、マネジメントを回せるだけの組織の土壌みたいなものがないと、そんなの要らないよとか、なくてもできているよということになるのかなと。もっと戦略をちゃんと考えて、世界に通用するレベルまでになると、監督がいて、全体を見るマネジメントが効いてくるけど、もっと下のレイヤーやレベルだと、マネジメントなんてなくても回せるなんて言いながら世界を目指しますって言いだしてしまうのかなって。つまり全員で切り込んでいるような会社は結構ありますよね。

 

それでも儲かっているところもありますよね。

 

ルールがサッカーほど厳密に決まっていないから「手を使っている人がいるうちは手を使っても大丈夫」とか平気で言う人が出て来るのかな。でもどんどん市場が大きくなるとか、レッドオーシャンに乗り出そうとすると、市場のルールももう少ししっかりしたり、張り合う条件が厳しくなったりして、制約の中でどうするか考えて動かないとうまくいかないんだけど、強引に突破しようとするのが現状なのかなって。

 

個人的には課題と言うよりは問題をどうしたいのか、みたいなものがあるかどうかがまず大事と思っています。案件に入って困るのは、僕らが問題を探して、解決してあげるための活動をしているという状況。相手にとってみれば「そんな問題があったんだ、解決して嬉しい」って話かもしれないけど、その状態だったらやっぱりマネジメントは要らないじゃんって話になるので。僕らも提案する際に気を付けることだと思っているんですけど、多分問題の整理ができてないんですよね。課題設定ができてから、僕らが活動するっていう形かなって思いますけどね。ここが合わない限りは、さっきのサッカーみたいに、別に点が取れていたらいいでしょうみたいな。それじゃだめだってことを本人たちが認識できない限りは先に走れない気がします。

 

さんの例だと全員でゴールに切り込んでいる人たちが次のゴールを設定できれば、やっぱ監督が必要かもって話になる気がします。ある程度ロードマップができるようになって、全国を目指そうよって話を監督と運営チームとか上の人達と握って、現場にも一定の理解を得られると動きやすくなるだろうなってイメージが湧きますね。

 

ジョブディスクリプションが明確な海外でも、マネジメントスキルは転職時のアピールとして有効

 

そういう素地や前提条件みたいなものがあるとして、それらが揃っている会社が増えれば増えるほど、秀玄舎も機会が増えるし、その先のバリューを表示できる人が増えて、僕らもそれに応えることができる、いいことずくめではあるんですけど、その啓蒙をして行く、あるいは広めていく、それができる組織が増えていくために、何かできることってないのかなと思っています。

 

メディアを作っても届かない気がしますよね。

 

海外ではこういうのをどのように培っているのか誰か知っていますか?海外の方がマネジメントに関して日本より進んでいて、考え方が共有されているように思えるので。

 

私の実体験では、海外のIT界隈の人たちと仕事していると、マネジメント的ポジションの人以外は一切他人のことなんて気にしないんですよ。そんなことを気にしても、お給料に微塵も反映されないし、与えられた役割のことしか知らなくていい。良くも悪くも、そのジョブロールを持っている人がいないと成り立たないように出来ていて、勝手に横連携で他人のために情報を共有したりとかしないんです。だってその情報共有するためのお金をもらっていないしっていう。空気を読んで他人の為に何かをしようみたいな基本はあんまりない。なぜなら全員ジョブ採用だからこの人が絶対必要っていう認知度が高いし、特にサンフランシスコとかシリコンバレーだと人の入れ替えがめちゃくちゃ速いので、複数の役割をこなしてくれる人がいることってリスクなんですよね。三人分できる人が一人やめたら代わりに三人入れるの?引き継ぎできるのってなるからあえて労働細分化しているんだと。一見コスト高に見えるけど、それが組織やプロジェクトには絶対必要な時期もある。ただし海外だと上司から推薦状を書いてもらえないと次の会社に行けない、自分がいかにマネジメントできるとか、実績をこういう根拠で上げてきたというアピールがものすごく意識高いですね。

 

マネジメントが必要無いって思っているわけじゃなくて、必要だと思っているけど、自分の仕事じゃないと。

 

そうそう、マネジメント系の研修に色々行っていると、下手すると訴えられるとか別に論文を出すと言われるからやめておきましょう、みたいなことがテキストにも書いていました。

 

さんの言っていることと、これまでの議論と割とセットになっているのは、結局マネジメントとは何か?みたいなことの共通認識が常にあって、海外はジョブディスクリプションがあるわけですよね。マネージャーは、こういう仕事をする人であるという定義が割とみんなの中に共通して既に存在している。マネジメントがうまくいくのかどうかって日本だと意欲とか根性論だけど、向こうは多分機能としてちゃんと定義されているんだと思います。だからうまくいかないのはプロセスなんだろうなと思うんですよね。最近、ジョブ型って言うけどマネジメントの定義や機能が曖昧で、ほとんどみんなイメージが合っていないなって思いました

 

組織の作り方から違うね。機能を組み合わせて作るのか、あるいは頭数を揃えて、この人たちがうまくあの有機的にいけばいいっていうのか。

 

上の人としても、自分でコントロールしたい、管理をしたいっていうのは自然な発想だと思うんですけど、そこに対してすごくやっぱり海外はドライ。こいつの方向性がダメなら頭を付け替えれば方向性変えられるじゃんっていう。その感覚は果てしなく違う。

 

秀玄舎も海外にあればよかったですね。

 

マネジメントスキルに対する評価システムは改善策になり得る?

 

そういう風に変わりたいと思っている企業はちょっとずつ増えているように思いますけど、ペースは遅いですよね。PMって何なのかを明らかにするために、周辺的なラインのマネジメントとは本来これだけだよねと、マネジメント領域のことを話せると、より際立つような気がします。本当に日本では渾然一体と言う悪い意味だからこそ経験がないとできない。そう考えるとそれぞれの領域へのマネジメントに関するアセスメントってできないですかね?あなたの会社はここのマネジメントをやっているけど、ここの領域はやっていないよという評価をしてもらえると助かる。

 

プレマネジメントテストみたいなのがあって、何点取れたら秀玄舎に発注、みたいなのがあるといいですね。

 

我々にオーダーしてくれている人たちは、たぶん成功体験があるんですよね。マネジメントしてうまくいったとか、ダメだったところにマネジメントを持ち込んでうまくいったみたいなことを体験しないことには結局分からないのかもしれない。

 

どうやって広げられるかって話だと、組織のロールモデルみたいなものですかね。こんな風に組織設計をしていると、マネジメントはこういう風にできるみたいなものが語られたら、もう少し広げやすいのかなという気がします。

 

それを経営者層が作れればいいし、作れなくても相談してくれるといいですね。PM補佐をやって、成長させてちゃんと評価してくれる組織もあるけど、評価する軸すらないとかわいそうですよね。

 

せっかく頑張った人が結局評価されないのはつらいですよね。会社の評価軸や自分が目指すロールモデルみたいものが合致しなくなると、結局会社を辞めなきゃいけなくなると私も経験したことですが。

 

マネジメントの狭義と広義の定義やその幅、あるいは我々はマネジメントと呼ばないけど、世の中ではマネジメントだと思われているもの、さっき言ったラインマネジメントみたいな話とか、あるいはマネジメントの因果関係みたいなものはどこかで少しその柔らかい文章にしてもいいかなってちょっと思いました

 

文章や関係図があると表現しやすいでしょうね。

 

あると結構使い道がありますよね。確かに大事ですよ、今日のところはこんな感じでおしまいにしたいと思います。みなさんありがとうございました。