定期開催している秀玄舎メンバーによる意見交換会。前編では昨今、いかにゼネラリストとしての価値が高まっているかをメインに議論した。後編では秀玄舎がそのスキルを広めていく上で、直面している課題、今後期待できる展望について意見を交わした。
重要性をなかなか理解してもらえないゼネラルなスキル。一方で一度体感してもらえれば大きな強みに
自分たちはゼネラリスト部分を担保して、逆にそれ以外の部分はもうどんどん外注してっていうふうに割り切るのも一つの解だろうと思うんです。大企業なんかはそれで全然問題ないのかもしれない。その辺の意識があまりない人たちが何となく困ったからといってファームとかSIerに丸投げしようとすると、今はファームやSIerも内部をどんどん下請けに出してしまうところもありますよね。期待しているゼネラルな部分の有無も落差が激しいし、そもそも中小企業はそういう相談先すらあまりないのかなっていう気もします。だから、ゼネラルなスキルセットみたいなものを各社がどのように獲得していくかが、今後の隠れテーマだと思うんですよ。今はそれっぽいビジネスが今は無いのかなって気がする。
そんなことないですよ。行政書士の顧問先は全部そんな感じです。法務面だけじゃなくて経営コンサル面もそんな感じです。
行政書士にはあるかもしれないけど、ITではあまりないんじゃないかなって。
そこのスキルセットって一度体感してもらえると、長くいてほしいってすごく重宝されるけど、最初からそういう人が必要だと青写真を描いてくれる人はなかなかいないですよ。なんならエンジニアとデザイナーさえ集めればうまくいくって思われている。また重宝されたからといって大企業のポジションを奪えるのかっていうとそうでもないですよね。仕事を受注するとかリピートするという意味で、もちろん力にはなっているんだけど。スキルのある人だけ集めて、仕事の仕方そのものを作り出してから、更に人を入れるほうがいいのに、ひとまず人が集められて、たまたまスキルのある人がいれば上手くいく、いないチームは上手くいかない、っていう現状は何とかしたほうがいいですよね。先ほどの中小企業の切り口って話に関してはITコンサルタントって言っちゃうとダメなのかも。経営コンサルがある、ITコンサルでいいと思います。
僕は経営コンサルがITコンサルを兼ねていいと思いますよ。うちの会社もそもそも定款で経営コンサルティングって言っていて、ITコンサルとは一言も言っていない。だから、経営コンサルタントがやるITコンサルという売り方で全然いいと思います。一人で両得ですって。
ITコンサルor経営コンサル、秀玄舎はどちらを名乗るべき?
逆に中小企業が頼っている“経営コンサル”ってどんな感じなんですか?
中小企業診断士と言われる人たちですね。この人たちを呼ぶのに補助金を付けられるので、このまま、いてもらったら役に立つかもっていうお試し期間があるんですよ。間口を最初から広く取っておいた上で専門性を提供する方が中小企業向けには良いんですね。
「ITに強い経営コンサルタントです」って言い方をするんですか?
どちらでもいいです。「僕はITコンサルもできます」って言えばいいだけ。
メインは経営コンサルだけど、ITが一番強いです、みたいな語り方ってことですね。
秀玄舎も経営コンサルタントを名乗ったほうがいいですか?
私はそれをさんにはおすすめしました。間口は広く取っておいたほうがいいかなと。
なるほど。でも他にも何かできることが増えなきゃいけない感じがしますよね。
だからこそ、ゼネラリストなんじゃないんですか。
秀玄舎の社内プロジェクトの概念から言えば、できていいはずですもんね。
違和感はないですね。大企業はどちらかというと、より細分化された専門性から入っていってゼネラリストとして力を発揮するみたいな話だし。大企業向けのグランドデザインを作るのは関係者への説明だけとっても、本当に数十人単位のリソースがないと難しいし、秀玄舎がやりたい仕事でもないんじゃないかなと思ったりもします。
僕とさんとさんで入っているC社さんはそんな感じですね。さんが経営戦略的なところを、さんがデザインとか、顧客設定のビジョンを、僕は足廻りの技術とかを語っています。お互いに補完しあって、隙間をちゃんと埋める意識でみんなやっているので、てんでバラバラで収拾つかない事にはならないし、これを色んなところでできると価値を提供できるだろうという手応えはありますね、手前味噌ですが。
ゼネラリストとしての価値を、いかに広めていくか
僕が個人的に感じているのは、行政書士とかって、外部専門家同士の横の連携も共通言語で会話できるのに、ITは各外部専門家の共通言語がないから、誰かが通訳しないと話が通じなくて全然まとまらないということ。だからゼネラリストがその間を取り持つ通訳のような役目を果たしているんですよね。要はディスパッチした後に互いに通信できるように通訳までしていかないと、それぞれ別々のものがまとまらないっていうところがありますね。
横の繋がりはないですね。お医者さんとかは、文句を言いつつもそれぞれに紹介するときとかリスペクトを持ってする前提があるじゃないですか。ITはないですね。
例えば、レントゲン撮った画像を渡せば向こうもわかってくれますよね。ITはもらった情報をどのフォーマットで開けばいいのみたいなところから始まるから。
開発する側からして、ビジネス企画書と、ペルソナとかカスタマージャーニーとかもらって、「これで作ってください、分かるでしょう」って言われたら困りますよね。
作った後「これは違う」って言われて絶対お金もらえないやつですよね。でも各社の上流がそういうものを作りたがるし、お客さんも「分かりやすくていいね」って言うけど、「いや分かりやすいけど、作るものを表してないじゃん」っていう。これは一例ですがさんとペンギンを売り出すときに作った決め文句は、「UXはシステムとビジネスをつなぐ共通言語です」。要はビジネス部門の人もシステム部門の人もCSの人も「UXを語りましょう」って言ったら、私の部署には関係ないって言えなくなって同じ舞台に立てるんですっていうのは刺さるところには刺さったなと思っています。一方で、じゃあこれでもの作りやDXが推進できるのかって言うと、最低レベルのエンジニア的知識や、秀玄舎でいうところのマネジメント初級みたいなところが必要で。正直、体感で身につくものじゃないので難しいのはジレンマですね。 私も大企業にいたときは、デザインも開発エンジニアのことも理解した上で、本当に通訳的役割をやっていたんですよ。アメリカ人に対しては英語で喋るように、エンジニアにエンジニアリング用語、デザイナーにはデザイン用語で喋っていたけど、この役割を務めるにはこのスキルが必須だと言ってしまうと、かなりの負荷を強いることになって難しくなるでしょうね。
お医者さんの例で言えば、患者が色んなお医者さんと対等に話せるレベルを要求するみたいになっちゃいますね。ゼネラリストは秀玄舎的には創業以来のテーマでもあるわけですが、なかなか答えが簡単に出ないので難しいですね。ただ、重要性も価値も高まっているので、さんが言ったように、ちゃんと名前つけましょうよとかブランディングしましょうよという話も、今後やっていけたらいいなっておぼろげに思っています。
先ほどさんが言っていた、中小企業は中小企業診断士の公的な活動の支援があるように、公的な分かりやすいルートに乗っかれるようなものがあると入り口として広がっていいのにと思いました。うちも中小企業診断士取れば一番早いかもしれない。
中小企業は日本の80%以上を占めていますからピンキリですけど。
困った時はこういうところに頼んでいくんだよ、こういう公的支援があるんだよってね。多分みんな同じことを聞いて、同じような行動を取ると思うのでその路線に乗れるといいですね。
秀玄舎は、中小企業だけじゃなく大企業も相手にしているので、そこもフォローしたいですね。コンサル会社経由とかもあるかもしれないですけどルート作りができれば。
ネームバリューがものを言う世界みたいなものですからね。そのために無理にネームバリュー高めるっていうのは、すごく秀玄舎的じゃなくて私も嫌ですけど。
難しいとこですね。
短期間で、大きい仕事をもらってやろうとすると、それなりに人数が必要だったりしますし。
きらきらな人に会社作ってもらって、その内実は秀玄舎で運営してる。
外を頼るのは割といいなと思いますよ。特に大企業ではアドミニストレーションに近いようなコミュニケーションが本当に面倒だから、そこらへんは頼れるといいんだろうな。
これでよいでしょうか。いつも結論は出ないですが、色々とキーワードが出てきたので、折に触れて思い出しながらやっていけると良いかと思っています。今日はじゃあおしまいにします、お疲れ様でした。
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